1. 「職人が集まらない」——調べても会社目線の答えが出てこない
「職人 集まらない」「職人 集め方」「とび 採用」「塗装工 求人 来ない」——職人を採りたい会社が検索して出てくるのは、たいてい求職者向けの記事だ。仕事のなり方、必要な資格、給料の相場。採る側が知りたい「なぜ応募が来ないのか」「どこに求人を出せばいいのか」に、まっすぐ答えているものは少ない。
そもそも現場で「職人」と呼ばれる人たちは、統計や法令の上では技能工・現場作業員という言葉で扱われる。とび、鉄筋工、型枠、塗装、左官、内装、配管、解体、重機のオペレーター——呼び方は違っても、現場で直接手を動かす仕事はすべてここに入る。この記事では、その全体を指して「職人」と書く。
職人は、ひとくくりにできない。とびと塗装では現場も体力もまるで違うし、採用の勘所も同じではない。それでも、職種をまたいで共通する壁が2つある。ひとつは、現場の作業職は有料の人材紹介も派遣も法律で使えないこと。もうひとつは、国の統計が職種を大きなまとまりでしか出さないため、「とび単独の求人倍率」のような数字がそもそも存在しないことだ。
この2つを踏まえないと、打ち手も情報の読み方も間違える。まずここを固めてから、職種ごとの勘所と、求人をどこにどう出すかに入っていく。
2. 現場の職人は「有料の人材紹介」も「派遣」も法律で使えない
ここが、技能工の採用でいちばん重要な前提だ。そして、意外なほど知られていない。
他の業界なら、人が採れないときの定石がある。人材紹介会社に頼む。派遣で埋める。だが建設現場の作業職では、この2つが法律で封じられている。
職業安定法第32条の11は、有料の職業紹介事業者が「建設業務」に就く職業を紹介してはならないと定めている。その「建設業務」の定義は、条文の中でこう書かれている——「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務」。ポイントは、職種名で線を引くのではなく、現場でこれらの“作業”に直接従事するかどうかで判断される点だ。
したがって、とび・鉄筋・型枠・塗装・左官・内装・配管・解体・重機の運転など、現場で直接手を動かす技能工は、名称を問わずここに該当する。労働者派遣法第4条第1項第2号も、まったく同じ定義の「建設業務」への労働者派遣を禁止している。
一方で、施工管理(現場監督)のように、作業に直接従事しない職種は対象外だ。施工計画に基づく工程管理・品質管理・安全管理といった「施工の管理」は建設業務に該当しない、というのが行政の整理になっている(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)。管理系は紹介・派遣を使える。
なお、建設事業主の団体が厚生労働大臣の認定・許可を受けて行う「無料」の建設業務職業紹介という制度は存在する。ただしこれは団体を通じた仕組みで、一般の人材紹介会社に「職人を有料で紹介してほしい」と依頼できる、という話ではない。
根拠:職業安定法第32条の11/労働者派遣法第4条第1項第2号(e-Gov法令検索)、厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」「建設業務有料職業紹介事業」
この意味は重い。技能工を採るとき、「有料の人材紹介(転職エージェント)に連れてきてもらう」という選択肢は、最初から存在しない。紹介会社に問い合わせて断られた経験のある社長もいるはずだが、それは会社の規模や条件のせいではなく、法律のせいだ。そもそも、現場の技能工を専門に扱う転職エージェントが世の中にほとんど見当たらないのは、探し方が悪いからではない。法律上、そういうサービスが成り立たないからだ。一方で施工管理(現場監督)向けのエージェントは普通に存在する——同じ建設でも、作業か管理かで扱いが分かれる。
裏を返せば、技能工は自社で求人を出して応募者を集めるのが基本になる。運用そのものを外注することはできるが、「人を連れてくる」タイプのサービスは使えない。だから、求人媒体をどう選び、どう運用し、応募が来たときにどう動くか——そこが勝負どころになる。同じ構造は電気工事士の採用や土木の採用にも当てはまり、逆に管理系である施工管理の採用は使える手段そのものが違ってくる。
3. 職種でこれだけ違う|厚労省データで見る職人の採用難
「うちの職種は、どのくらい採りにくいのか」。それを知ろうとすると、最初にぶつかるのが冒頭で触れた壁だ。国の統計は、職人を職種ごとには公表していない。とび・鉄筋・型枠はまとめて「建設躯体工事の職業」、塗装・左官・内装などはまとめて「建設の職業(躯体を除く)」という具合に、大きなまとまりでしか出てこない。だから「とび単独の有効求人倍率」という数字は、どこを探しても存在しない。個別職種の倍率を断言している情報を見かけたら、出所を疑ったほうがいい。
そのまとまりで見ると、こうなる。
| 職業のまとまり(含まれる主な職種) | 有効求人倍率 | 採りにくさ |
|---|---|---|
| 職業計(全職業) | 0.99倍 | 求職者のほうが多い |
| 建設・採掘の職業(大分類の合計) | 4.66倍 | 平均の約4.7倍 |
| 建設躯体工事の職業(とび・鉄筋・型枠など) | 7.55倍 | 技能工でも最難関 |
| 建設の職業/躯体を除く(塗装・左官・内装・配管など) | 3.96倍 | 平均の約4倍 |
| 定置・建設機械運転従事者(重機オペレーターなど) | 1.59倍 | 技能工の中では相対的に緩い |
厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」令和8年5月分の数字だ(常用・パートを含む)。全職業の平均は0.99倍——世の中全体では求職者のほうが少し多い。ところが技能工はどの区分も、この平均を大きく上回る。とりわけとび・鉄筋・型枠といった躯体系は7.55倍で、建設関連の中でも群を抜いて採りにくい。求職者1人の前に、7つも8つも求人票が並ぶ計算だ。
一方で、重機オペレーターを含む区分は1.59倍と、技能工の中では相対的に緩い。とはいえ平均の0.99倍よりは高く、資格を持った経験者に限れば各社の奪い合いになる。なお、土木作業従事者は5.70倍、電気工事従事者は3.22倍で、これらは別記事で個別に扱っている。
要するに、職種によって難易度ははっきり違うが、どの技能工も「待っていて採れる」市場ではない。この前提の上で、職種ごとの勘所を見ていく。
4. 職種別・採用の勘所(とび/鉄筋工/型枠/塗装/配管/解体/重機ほか)
紹介が使えないという条件は全職種で共通だが、「誰を狙い、何を求人票に書くか」は職種で変わる。代表的な技能工ごとに、勘所を短くまとめる。
とび・鉄筋工・型枠工(躯体系|7.55倍)
建設物の骨組みを組む花形だが、高所・重量物・危険を伴い、足場・玉掛け・とび技能士などの資格や経験も要る。だから経験者の母集団がとにかく薄い。経験者だけを狙うと、求人を出してもほとんど残らない。未経験に間口を広げ、資格取得支援と安全教育・OJTの体制を求人段階で具体的に示すのが現実的な打ち手になる。「危ない・キツい」の裏にある、手に職・高い日当・キャリアの道筋を言語化できるかどうかで応募数が変わる。
塗装工・左官・内装・防水(仕上げ系|3.96倍)
技能がそのまま品質に出る職種で、独立志向の職人も多い。躯体系ほどの倍率ではないが、それでも平均の4倍前後。技能を習得できる道筋(見習いからの育成計画)と、工賃・歩合の透明性、年間を通した仕事量の安定を示せると刺さりやすい。屋内作業が中心の工種は、天候に左右されにくい働き方を訴求できるのも強みだ。
配管工(設備系)
給排水・空調・ガスなど、建物の“血管”をつくる仕事。管工事施工管理技士や給水装置工事主任技術者といった資格がキャリアに直結し、需要も安定している。統計上は「建設の職業(躯体を除く)」に含まれ、有料紹介・派遣が使えない点は他の技能工と同じ。資格取得支援と、屋内比率・将来の資格キャリアを打ち出すと、腰を据えて働きたい層に届く。
解体工
老朽化した建物・インフラの更新で需要が増えている一方、「キツい・危ない」のイメージが先行しやすい。解体は明確に建設業務にあたり、有料紹介・派遣は使えない。機械化が進んだ現場の実態、安全対策、そして待遇の実額を隠さず出すことが、イメージのギャップを埋める近道になる。重機オペレーターを兼ねられる人材は特に重宝される。
重機オペレーター(1.59倍)
統計上は技能工の中で相対的に緩い区分だが、車両系建設機械や移動式クレーンの資格を持つ経験者は各社が奪い合う。逆に言えば、未経験から育てる前提なら間口は広げやすい職種でもある。その場合は資格取得支援と教育体制をセットで用意し、「無資格から手に職をつけられる」道筋を求人で見せたい。
職種は違っても、共通するのは「経験者は薄い→未経験に間口を広げる→資格支援と定着設計で戦力化する」という流れだ。そして未経験を採るほど、入社前に伝えた情報と現実のズレをなくす工夫が要る。建設業の新規高卒就職者は3年以内に41.4%が離職しており(令和4年3月卒・産業計は37.9%)、間口を広げる打ち手は辞めさせない定着設計とセットで初めて効く。
5. 職人の求人はどこに出すか|使える手段と使い分け
紹介と派遣を外すと、残る手段は限られる。整理するとこうなる。
| 手段 | 現場の職人に使えるか | 費用の考え方 | 社内にかかる手間 |
|---|---|---|---|
| 有料の人材紹介 | × 法律で不可 | — | — |
| 人材派遣 | × 法律で不可 | — | — |
| ハローワーク | ○ | 無料 | 中(求人票の作成・更新) |
| 求人媒体・求人検索エンジン(有料) | ○ | 掲載費・運用費 | 大(原稿・運用・応募対応) |
| 求人アプリ | ○ | 掲載費・課金型 | 大(応募への即返信が前提) |
| チラシ・看板・現場の掲示 | ○ | 印刷・製作費 | 小〜中(受け皿の導線が要る) |
| 自社サイト・SNSでの発信 | ○ | 低い | 大(続けないと効かない) |
| 知人・協力会社からの紹介 | ○ | ほぼ無料 | 小(ただし母数が読めない) |
| 採用代行(RPO) | ○ 媒体運用を代行 | 月額固定が中心 | 小 |
見てのとおり、使える手段はどれも「自社で求人を出して母集団を作る」系統に集約される。そのうえで、性質が違う。順に見ていく。
ハローワーク|無料で出せるが、求人票の質がそのまま出る
費用がかからないため、まずここから出す会社が多い。ただし無料である以上、同じ地域の同業他社もほぼ全社が出している。職種名と最低限の条件だけを書いた求人票は、その中に埋もれる。仕事内容・使う機械・現場の範囲・給与の実額例・資格取得支援まで具体的に書けているかどうかで、同じ無料枠でも見え方が変わる。
求人媒体・求人検索エンジン|母数は最大、ただし運用が要る
掲載費や運用費はかかるが、届く母数はいちばん大きい。とくに求人検索エンジンは、原稿の書き方と更新頻度、そして予算配分によって表示のされ方が変わるため、「出して終わり」にすると費用だけが出ていく。逆に言えば、回し方を持っている会社ほど費用対効果が上がる領域でもある。
求人アプリ|若手・未経験に届きやすいが、返信の速さが勝負
スマートフォンから数タップで応募できるため、若手や未経験層に届きやすい。ただし応募のハードルが低いぶん、応募者は同時に何社も受けている。返信が翌日になった時点で、他社の面接が先に決まっていることは珍しくない。使うなら、日中に誰が返信するかを決めてから出したい。
チラシ・看板・現場の掲示|地域に効く、ただし受け皿とセットで
現場の仮囲いに募集を掲示する、社用車に募集の表示を入れる、近隣にチラシを配る——古典的だが、通勤圏内で働いている人に直接届くという強みがある。職人の転職は通勤距離が決め手になることも多く、地域性の高い手段は今も有効だ。弱点は載せられる情報量が少ないこと。電話番号だけ載せて終わりにせず、詳細を確認できる自社の採用ページなど、受け皿の導線までセットにしないと問い合わせにつながらない。
知人・協力会社からの紹介|歩留まりは高いが、計画には使えない
人柄と腕が事前に分かるため、入社後の定着率も高くなりやすい。ただしいつ何人来るかが読めない。「今期あと3人」という計画的な採用の柱には据えられないので、他の手段と併用する前提で考えたい。
結局のところ、どれか1つで足りることは少ない。ハローワークと有料媒体を軸に置き、そこへ地域性の強い手段(チラシ・看板)や紹介を重ねるのが、現実的な組み立て方になる。そして、そのどれもが「原稿を書く・媒体を運用する・応募に即応する」という手間を社内に要求してくる。
ここに、職人を抱える会社のもうひとつの現実がぶつかる。社長も職長も、日中は現場にいる。応募が来ても、その日のうちに折り返せない。求職者は複数社に同時に応募しているから、返事が遅い会社から順に候補から外れていく。手段が限られているうえに、運用の手が足りない——これが職人採用の構造的な詰みどころだ。
どの手段をどう組み合わせるかの考え方は、建設業の採用代行の比較と採用代行の完全ガイドにまとめている。原稿と運用の具体的な勘所は応募が集まる求人原稿と運用の勘所5つ、かかる費用の考え方は建設業の採用代行の費用相場を参照してほしい。
自社の職種だと、どう採るのが早いかを整理します
とびか、塗装か、重機か。職種とエリアによって、効く媒体も打ち手も変わります。紹介が使えない前提で、建設特化の視点で一緒に考えます。無料・その場で契約は不要です。
無料で相談する採るだけでなく、育てる費用にも助成がある。玉掛け・高所作業車・小型車両系建設機械といった特別教育や技能講習の費用は、人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースの対象になる。職人を採って一人前にするまでの費用は、建設業の採用に使える助成金・補助金一覧で確認できる。
6. ゴリラ採用の考え方
ゴリラ採用は、建設業に特化した採用代行(RPO)だ。とびや塗装のような現場の職人は人材紹介が使えない——その前提から設計している。
やることはシンプルで、求人媒体の選定と運用、求人原稿の作成、応募者への即時対応、面接調整までをまるごと引き受ける。社長や職長が現場に出ている間に応募を取りこぼさない体制をつくり、「何人採っても費用が読める」定額の考え方で運用する。
自社の職種・エリア・採りたい人数だと、どの媒体をどう回すのが早いのか。実際の求人内容に合わせて、無料相談でお伝えしている。